平成28年度の税制改正については、平成28年2月に財務省から発表されています

その中で、私が個人的に???な制度について、個人的意見を述べます

今回のターゲットは「スイッチOTC薬控除制度」

財務省の発表では、「セルフメディケーション推進のため」という理由づけがされています

(この制度は平成29年分から適用されます)

 

まずは制度の概要

スイッチOTC薬控除制度の概要をザックリ紹介すると、次のようになります

適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から

①特定健康診査(いわゆるメタボ健診)
②予防接種
③定期健康診断(事業主健診)
④健康診査
⑤がん検診

のいずれかを受けている人

平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に

いわゆる「スイッチOTC医薬品」の購入費用を年間12,000円を超えて支払った場合に

その購入費用(年間10万円を限度)のうち12,000円を超える額を所得控除できる制度

です

この制度は、従来からあった「医療費控除」の特例として創設されたものです

したがって、本特例の適用を受ける場合には医療費控除の適用を受けることができず

医療費控除の適用を受ける場合には本特例の適用を受けることができません

つまり、どちらか一方の制度を選択適用するというものです

 

制度創設の背景とねらい

スイッチOTC薬というのは、元来は医師の処方せんが必要だった医薬品について、一般の薬局でも購入できる一般用医薬品などに転用した医薬品のことです

代表的なところでは、ロキソニンS、ガスター10なんかが有名です

今回の控除制度ができた理由と、スイッチOTC薬ができた理由は同じで、社会保障費を抑えるためなのです

例えば、頭が痛いサラリーマンが病院で処方されたロキソニンを購入した場合、薬品代の7割は社会保険が負担します

一方、街の薬局でスイッチOTCであるロキソニンSを購入すれば社会保障費はゼロ

つまり、ちょっとした病気やケガなら自力で治す!という人は、国の社会保障費抑制に貢献しているということになるわけです

今回、スイッチOTC控除が創設されたのも、そういった「社会保障費削減に貢献する人」に恩恵を与えるためだということなんですね

だから、改正案の出どころは「厚生労働省」になっています

 

本当にメリットがあるの?

社会保障費削減のため、市販薬を使って自力で病気やケガに対応している人というのは、なかなか医者にいきません

必然的に、支出する医療費も少額になります

従来の医療費控除は、支出した医療費が年間10万円(又は所得の5%)を超えないと控除額が発生しませんでした

つまり、健康維持と医療費抑制に貢献している人が、医療費控除の恩恵を受けられないという状況だったわけです

そこで、今回の制度で、スイッチOTC薬を年間12,000円以上購入すれば所得控除しましょう!という制度を導入したわけです

正確な表現をすれば、この制度は、医療費抑制に貢献している人に恩恵を与えることによって、そういった「医療費抑制に貢献する人」を増やしたいという狙いがあるのです

 

だったら、おかしいんじゃない?ということになる

そもそも、従来からある医療費控除という制度は、大きな病気などで多額の医療費を負担することとなった人を救済しよう!という建前で創設された制度です

しかし、いつの間にか「医療費をドンドン使って、医療費控除で税金を取り戻そう!」みたいな制度に変化してしまいました

また、ほんとうに救済しなければならないような低所得層の人が高額医療費を負担したとしても、そもそもこういった人々が非課税世帯のため、何らの補てんも受けられないという問題もあるのです

わたしが思うに、医療費の負担軽減策は税金で行うのではなく、医療行政予算の中で賄うべきなのです

以前に、このブログに書いた「医療費控除は無くした方がよいと思う理由」でも述べたとおりです

税金の制度をチョコチョコいじって誤魔化すよりも、高額医療費補てん制度などを充実させるべきでは?

国の考え方は、とにかく社会保障費を抑制したいというのも分かるのですが

だったら、医療費や医薬品に多額のお金を支払った人を、税制上優遇するということ自体、おかしな話になってしまいます

極端な話、医療費を年間1万円未満に抑えた人に、特別控除をしてあげる方が良いのです

まあ、どうやって申告するのか?というテクニカルな問題はありますが・・・

さらに、おかしな部分は、今回の制度が「スイッチOTC薬」に限定されたところです

厚生労働省の考えなのでしょうが、どうしてもスイッチOTCを広めて定着させたいみたいですね

本当にセルフメディケーション推進が目標なのであれば、人間ドックや健康診断、予防接種の費用を控除対象にすべきなのです

そちらは、相変わらず放置したままで、スイッチOTC薬だけ特例控除の対象というあたりに、厚生労働省の思惑が見え隠れするように感じるのは私だけでしょうか?

 

なんやかんや言うてますが、一番問題なのは

いろいろと制度創設の背景的な部分で、なんやかんや言うてますが

一番問題なのはですね

何がスイッチOTC薬なのかが分からんじゃないか!

ということなのです

もちろん、専門サイトなどで調べれば「ある程度は」分かるのですが・・・

従来の医療費控除の場合でも、1年間の領収証を分類して集計するのは大変でした

「これは、医療費控除の対象になるの?」という疑問や不安を抱く人も多かったと思います

それが、今回の特例制度が導入されたことで

「これは、スイッチOTC薬なの?」という確認作業が追加されるのです

多くの人は「知らんがな」の世界www

税務署や税理士に聞けば分かるんじゃないか?という期待もあるでしょう

しかし、税務署職員も税理士も、税務の専門家ではあっても医薬品の専門家ではありません

「この薬はスイッチOTC薬でしょうか?」

という質問に即答できるのは、医薬品専門職の方々くらい

つまり、制度の運営上にも大きな課題が残る特例制度なのです

とは言っても、税理士である以上は「スイッチOTC薬」について勉強しとかないといけませんけどね

 

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