支払調書に記載する支払金額の2つの解釈

支払調書の手引きの中で報酬等の「支払金額」欄の説明には次のような記載があります。

年中に支払の確定したものを記入してください。
なお、支払調書の作成日現在で未払の金額がある場合は、各欄の上段に未払額を内書きしてください。

この説明書きには二つの解釈が存在するのです。

解釈①支払ベース説

年中に支払が確定したものとは、年内に支払うことが決まっているものと解釈し、支払遅延などの特別な事情がなければ「年内に支払った金額」を支払金額に記載するとう解釈がひとつ。

例えば、毎月の税理士報酬を翌月10日に支払う契約をしていた場合、12月分の報酬は翌年1月10日に税理士へ支払うことになりますので、この場合12月分の報酬は「1月に支払うことが確定したもの」になります。

したがって、その年中の支払調書の支払金額には12月分の報酬は含めないこととなります。

解釈②発生ベース説

もうひとつの解釈は、年内に支払が確定したものとは「年内に請求されたもの」という解釈です。

この解釈は国税庁ホームページ内の「この記事」に書かれている一文から類推したものと考えられます。

その一文には

この「確定した対価の金額」とは、原則として、相手方にその支払を請求し得ることとなった金額をいうものと解されています。

と記載されています。

この国税庁HPの記事は家賃の支払調書に関する記述なのですが、同じ支払調書の支払金額欄に関する説明であると解釈すれば、報酬料金の支払調書でも同じ考え方になるという解釈なのです。

上記の税理士報酬の例にこの解釈を当てはめると、12月分報酬は年内に請求がされているので支払調書の支払金額に含めることになります。

さらに、説明書き下段によれば、12月分の報酬が「支払調書作成日において未払い」の場合には支払調書の上段に内書することとなるわけです。

上記の税理士報酬の例であれば、支払調書の作成日が翌年の1月10日より前であれば12月分報酬を内書する必要があります。

注意点
内書するのは「年末時点で未払のもの」と誤解されているケースがあるようですが、これは間違いですので注意しましょう。

 

どちらが正しいのか?

問題は、この2つの解釈のうち正しいのはどちらか?ということになるわけです。

私の解釈では解釈①の支払ベースが正しいと考えていますが、実のところ意見は様々です。

解釈①が正しいと考える理由は、法令や通達などを読み込んだ結果なのですが、あまり細かいことを書くと専門的になりすぎるので、あえて割愛します。

以下では、より実務的な観点から、受取人への影響などを考慮して、どちらより良いのかを述べていきます。

 

受取人への影響を考える

報酬(支払調書)を受け取る人の確定申告への影響を考えてみましょう。

解釈①の場合、支払調書には支払ベースの金額が記載されています。

これに対し、本人の確定申告上の収入金額は発生(請求)ベースなので、差額が生じることになってしまいます。

ただ、この支払金額の差額自体は余り問題ではありません。

というのも、報酬の支払調書は確定申告書へ添付する必要がなく、支払調書の金額と帳簿上の売上金額が異なっていても、正しく経理処理された売上金額であれば問題になることはないのです。

一方、解釈②の方法であれば、支払調書に記載された支払金額と受取人が確定申告上で計算した売上金額が一致することになりますので、受取人の方が迷うこともありません。

しかし、ここで問題になるのが源泉徴収税額なのです。

 

源泉徴収税額に内書がある場合の問題

支払調書の源泉徴収税額に内書がある場合、受取人の確定申告では特殊な取り扱いをされるケースがあります。

もしも受取人の確定申告が、所得税額より源泉徴収税額の方が大きい源泉還付の申告になった場合、支払調書に内書された源泉徴収税額は還付が保留されてしまうのです。

未だ納税がされていない税金は還付しないという当たり前の話ではあるのですが、この保留された還付金を受け取るためには改めて別の手続きが必要になります。

そう考えると、未払報酬分について支払金額と源泉徴収税額を内書することは、報酬を受け取る人にとって手間の増える迷惑な話とも言えます。

このような問題を起こしたくないのであれば、解釈①の支払ベースで支払調書を作成した方がスムーズではないかというのが私の考えです。

 

最後に実務的な話

個人的には解釈①ではないかと書きましたが、解釈②が間違っているとも言い切れないのが実情です。

報酬支払先との取引慣習などから、これまで発生ベース(又は支払ベース)で支払調書を発行してきたのであれば、途中で変更しない方が無難と言えます。

双方納得の上であればどちらの解釈で作成しても良いのではないでしょうか。

実際には、解釈①と解釈②の両方の考え方で作成された支払調書が世の中には存在しています。

そして、これらの支払調書について過去に税務署から訂正や是正の指摘を受けたという話も聞きません。

逆に、この解釈について税務署に質問しても曖昧な回答しか得られなかったという話があるくらいです。

 

大切なのは、取引先のことを考慮した処理にすることではないかと思います。

 

Caution
※ 記事中に記載した法令や情報は執筆時点のものです。その後の改正や変更等で取扱いが変わっている場合があります。
また、読む方のために分かり易い表現で記述しており、著者の個人的見解も多く含まれていますので、前提条件などによっては記事内容の取り扱いと異なる結果になるケースもあります。
実際の解釈や適用に当たっては必ずご自身の責任のもとで再確認等をお願いいたします。


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