間違ったコスト削減策で労働環境が悪化すると、かえってコスト高になりますよ
こんにちは、税理士の天河(あまかわ)です
コスト削減策というと、とかく「お金を使わないこと」と思われがちですが、そんな直接的な削減策ばかりに目を奪われてはいけないのです
企業のコストで一番大きいのは何でしょうか?
金額的な話だけすれば、仕入や材料費などの主要原価が大きいのですが、この部分を削減することは品質低下などのリスクを伴うことになり、企業の息の根を止めてしまうほどのリスクがあるので、手をつけられない感じがしますよね
では、そんな主要原価以外で考えた場合に、一番大きなコストといえば「人件費」ではないでしょうか
「リストラ」という言葉が「人員削減」だと誤解されたのも、人件費が最も大きなコストである証しだと思います
また、人件費以外のコスト削減といえば、事務用品など非生産部門のコスト削減というパターンも多く見られます
本当は新しいコピー機が欲しいけど、コスト削減のため、故障がちな古いコピー機を使っているとか・・・
しかし、こういった直接的なコスト削減策が企業体力を弱めていることに気が付かなければいけません
前述の「古いコピー機」を例にとれば
故障しがちなコピー機は、修理代もかかるし、故障による業務効率の悪化にもつながります
そのため、社員の労働時間は延びることになり、人件費は上昇します
そして、何より社員にとって「働きにくい職場環境」になっているというのが問題なのです
働きにくい(作業効率や環境が悪い)職場を人は好みませんから、優秀な人材が辞めてしまうかもしれません
人件費を抑える究極の方法は、人員を削減することではなく、優秀な人材を確保することなのです
単純に人員を削減すると、業務に支障がでるばかりか、労働環境が悪化して、優秀な人材が離れていきます
労働環境を整え、働きやすい職場を作ることは、優秀な人材確保に必要な要素と言えます
大手企業においても、最近では「ブラック」という烙印を押されてしまうと人が集まりませんからね
労働環境の整備は、時間のロスも解決するので、結果的に人件費抑制にもつながります
以前、民主党政権時代にやっていた事業仕分よろしく「それ!必要なの?」みたいな感じで、どんどん切り捨てていったら、労働環境は悪化するわ、効率は悪くなるわで、かえって人件費が増加する可能性もあるのです
それでも、社員の頑張りでカバーするなんて言ってたら、サービス残業が多くなって「ブラック」の仲間入りなんてことにもなりかねません
これからの企業にとって最も重要な資産は「人材」だと云われています
優秀な人材確保が必要な理由は、時間の有効活用にあると言えます
Aさんなら3時間かかる仕事を、Bさんなら1時間で仕上げてしまうとなれば、単純に効率は3倍です
人件費に換算すると、3分の1までコストカットできることになります
実際には、こんなに単純な話ではないのですが、人材と時間の管理をする方が、お金を細々と節約するより重要であることが分かっていただけたと思います
かの、ドラッカーの言葉にも
「一人の力で成功することは絶対にない。一人の力が他人の協力を得たとき、初めて事業は成功する」
「時間は最も乏しい資源であり、それが管理できなければ他の何事も管理することはできない」
というものがあり、人と時間の重要性を語っています
ただでさえ厄介な「人員削減」なんか考えなくても、人と時間に目を向けた改革で、コスト削減は実現できるのではないでしょうか
最後に、もうひとつドラッカーの言葉を示しておきます
「生産性とは機械や道具や手法の問題ではなく、働く人たちの動機である」
誤ったコスト削減で「働く人」の気持ちが疲弊してしまえば、生産性を落とすことにもつながるのです
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