クレジットカードと事業主勘定の上手な使い方。その会計処理方法について
経費の支出を現金払いにしていると、領収証の整理や記帳のとき煩雑です
その対処法として経費の支払いに「クレジットカード」を利用する事業者が増えてきました
一見、クレジット明細から経理処理をすればいいので楽な感じですよね
でも、いろいろな問題もあるのです
クレジット利用で帳簿が遅れる
クレジット会社にもよりますが、クレジットの利用明細書は概ね利用した月の翌月末頃に届きます
預金口座から引き落とされる前に届くのが原則です
つまり、クレジットを利用した経費が、実際に預金口座から引き落とされるのは翌々月になるわけです
これが、遅い!のです
毎月の収支状況を見たくても、クレジット利用分の会計処理が翌々月までずれ込むとなると、月次試算表の作成が遅れてしまい、タイムリーな経営分析ができなくなってしまいます
さらに、決算時期においては、経費の出金(口座引落し)が翌々月なので申告期限まで残りわずかな時間しかなくなってしまいます
クレジット利用分の経費については実際の購入日と決済日(口座引落し日)の期間が長すぎるという問題があるわけです
現金支払のケースにも言えることですが、個人的な買い物の最中に事業用に必要な物も合せて購入してしまうというケースはよくありますよね
現金の場合であればお店にお願いして領収証を分けてもらうという手もありますが、クレジット利用の場合はそういうわけにもいきません
結果的に、事業用経費と個人的経費が混在して預金口座から引落しがされてしまいます
この場合、クレジット利用明細書とにらめっこしながら事業用と個人用を区分して経理処理をすることになり事務処理がとても煩雑です
うっかりすると個人的な経費を事業用の必要経費で処理してしまうという危険性もあります
解決方法は事業主勘定
これまで書いてきた問題点の原因は何かと言えば
クレジットの引落し口座が「事業用の預金口座」だから起こっていることなのです
事業用の預金口座の場合、その預金口座の入出金全ての動きを記帳しなければなりません
そうしないと預金通帳の残高と帳簿の残高が一致しなくなってしまいます
そのため、クレジットの場合には実際の取引から2か月近く経った預金出金を全て仕訳処理しなくてはいけないわけです
現金主義で経理していたのでは、月次試算表や決算に遅れが出ます
そこで、このようなケースでは一般的に「未払金」勘定を用いて処理しています
【仕訳例】
消耗品2,000円をクレジットで購入
消耗品費2,000円/未払金2,000円
翌々月にクレジット利用分が口座引落し
未払金2,000円/預金2,000円
以上のように、ひとつの取引について購入時と決済時にそれぞれ仕訳が必要になるわけです
さらに、個人的な支出があった場合も、事業用預金口座から出金されたものは帳簿に乗せなくてはいけなくなるわけです
(仕訳例)
個人的な物品1万円を購入した場合
事業主貸10,000円/預金10,000円
では、どうすれば簡単に経理できるようになるのでしょうか?
それは、クレジットカードの引落し口座を「個人の預金」にすることです
一般的には、事業用のクレジットカードなので事業用の口座から引落しにしている、と考えている方が多いと思います
しかし、この考え方は逆です
事業用の預金口座から引き落とされるクレジットカードだから「事業用のクレジットカード」だということになるわけです
では、個人預金口座から引き落とされるクレジットカードは?
そうです、個人のクレジットカードということになるわけです
個人のクレジットカードで支払った場合と事業用クレジットカートで支払った場合、会計処理にどのような違いがでるのかというと
事業用クレジットカードで支払った場合の仕訳処理は前述のとおり非常に手間がかかりました
一方、個人のクレジットカードで支払った場合には事業用の必要経費分だけを経理処理すればよいのです
例えば、事業用の消耗品3,000円を個人のクレジットで支払った場合
消耗品費3,000円/事業主借3,000円
となります
この仕訳は、物品の購入時でもクレジットの引落し日でも、どちらの日で仕訳をしても良いのです
しかも、事業用クレジットカードのケースと異なり、仕訳はこの1件だけで終了です
さらに、さらに
個人のクレジットカードで個人的費用を支払った場合の処理はどうでしょうか?
事業用クレジットカードの場合は、先にも書いたとおり仕訳が必要でした
しかし、個人のカードで個人的な費用を支払ったわけですから、当然ですが事業とは無関係
したがって仕訳は不要になるのです
まとめると
個人用カードを利用した場合、事業用の取引だけを事業主勘定を使って仕訳をすれば良いだけ、ということになります
事業用カードを利用した個人的取引が多く混在してしまうような方の場合は、そもそもカード自体を個人のものだとして経理する方が簡単なのです
なお、法人でクレジットカードを利用する場合、上記の「事業主勘定」は役員借入金などの科目に置き換えて考えていただければ結構です
事業用クレカにもメリットはある
事業用のクレジットカードについて、デメリットばかりのようなことを書き連ねてしまいました
しかし、クレジットカードを事業用として利用するメリットは沢山あります
例えば
後日、取引明細が送られてくるので現金取引のような領収証管理が不要になります
支払が取引の1~2か月後になるので資金繰りの面でもメリットがあります
クレジットカードによってはポイントが付きます
フィンテック対応の会計ソフトであれば、取引明細を自動仕訳することも可能です
いずれにしても、一番大切なのは事業のお金と個人的なお金を明確に区分しておくことなんですよね
その部分が明確に分かれていれば、事業用クレジットカードのメリットを最大限に活かせると思います
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