個人事業者の開業届をたった5分で作成する方法と忘れがちな注意点
【目次】
開業したら税務署へ開業届を提出
個人で事業を始めたら、税務署へ開業届を提出しなければいけません。
用紙は国税庁ホームページでも入手できますが、開業届以外にも様々な申請書・届出書を一緒に提出する必要があり、意外に手間のかかる作業です。
さっさと手続きを済ませたい方は後述の「5分で開業届関係書類を作成する方法」がおすすめです。
開業届というのは、その名のとおり開業したことを「届け出る」手続きです。
つまり、税務署へ「個人事業を始めました」ということを知らせる手続きなので、開業届を出さなくても営業活動はできます。
しかし所得税法の規定では、
(所得税法229条)
国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
と規定されています。
「提出しなければならない。」という規定なので、開業届の提出は義務です。
ただ、この所得税法229条の規定には罰則規定がありませんので、巷では「出さなくてもいいんじゃない?」という誤った噂が流れているわけです。
開業届を提出しないとどうなる?
先ほども書いた通り、開業届の未提出には罰則がありません。
しかし、提出しないことによる様々なデメリットはありますので、必ず提出することをお勧めします。
デメリットその1
税務署に開業届を提出すると、確定申告の前に申告案内などが税務署から送られてきます。
開業届を出していないと税務署からは何も送付されませんので、確定申告用紙などは自分で用意することになります。めんどくさいです。
下手をすると申告を忘れてしまう可能性もあります。
当然ですが、確定申告は自主申告制度なので、税務署から書類が送られてこないからといって申告が免除されることはありません。
※最近はイータックスの普及促進のため、税務署から申告用紙などが事前に郵送されないケースが増えてますのでご注意ください。
デメリットその2
開業届の手続きは、開業届と一緒に様々な届出や申請の手続きをするのが一般的です。
青色申告承認申請や専従者給与届などが代表的なものになります。
これらの手続きを怠ると、後述する「青色申告の特典」の恩恵が受けられなくなるので注意が必要です。
デメリットその3
事業を行っていると様々な許可申請や融資申込が必要になるケースがあります。
こういった手続きの際に「開業届の控え」を提出するよう求められることが結構多いのです。
開業届が未提出の場合、当然「その控え」も持っていないので慌てることになりますよね。
開業届と一緒に提出する書類
税務署への開業届手続きの際には、開業届の他にも様々な書類を提出することになるのは、前段でも触れた通りです。
代表的なものを示しておきますので参考にしてください。
①青色申告の承認申請書
「青色申告」で確定申告をするための承認申請書です。
青色申告であれば様々な特典を受けることができ、節税にもなりますので、必ず開業届と一緒に提出しておきたいものです。
なお、青色申告をしたい年分や開業日によって提出期限が決まってきますので、早めに手続きをする必要があります。
②専従者給与の届出書
所得税法には「事業主の家族に対する支払は必要経費にできない」という規定があります。
ただし、青色申告者限って「専従者給与の届出」を提出し要件をクリアすれば、家族(専従者)への給与が必要経費になります。
詳しくは「国税庁タックスアンサーNo.2075」をご覧ください。
③給与支払事務所の開設届
従業員を雇用したり、青色専従者給与を支払う場合には、給与支払事務所の開設届も提出する必要があります。
「うちの事業所は給与の支払いがありますよ」ということを税務署に届け出るものです。
届出を行うと、源泉所得税の納付書や源泉徴収事務に必要な資料が税務署から送られてきます。
給与支払事務所の開設届を提出した場合、税務上は「給与等を支払って源泉徴収をする事業所」になります。
専門的に言うと「源泉徴収義務者」になるわけです。
源泉所得税は給与等から規定の税率で所得税を天引き(源泉徴収)し、その翌月10日までに天引きした所得税を納付する必要があります。
④納期の特例の承認申請書
上記③で触れたように、給与等から天引きした所得税は翌月10日が納付期限になるのですが、従業員数が10人未満の場合には「納期の特例制度」を利用することができます。
この制度を簡単に言うと、天引きした所得税を半年に1回まとめ納付することができる、という特例です。
具体的には、1月~6月の間の所得税は7月10日までに納付、7月~12月の間の所得税は翌年1月20日までに納付すれば良いことになっています。
毎月納付するのは面倒なので、納期の特例申請は該当すれば提出しておきたいところです。
申請手続きなので提出日が遅くなると特例が適用される月も遅れますので、早めに手続きすることをお勧めします。
控えに受付印をもらうのを忘れない
以上のとおり、開業届や各種書類の作成が完了したら、税務署へ提出することになります。
このとき、注意するのが「届出書の控えに受付印をもらう」ことです。
具体的には、開業届などの届出書類は同じものをそれぞれ2部作成します。そのうち1部が自分の控え用です。
2枚書くのが面倒な場合は、印鑑を押す前にコピーすると楽です。
税務署の窓口へ提出するときは2部とも提出し「1部が控え用です」と受付の職員に伝えましょう。
すると、受付終了後、控え用に「控」というゴム印と「税務署受付日付印」が押されて返ってきます。
開業届の控え(税務署受付印のあるもの)は各種許認可申請などの際に提出を求められることが多いので、大切に保管しておく必要があります。
ちなみに、税務署受付印は、その書類を提出したときに同時に控え用も提示した場合だけ押してもらえるものです。
つまり、「昨日提出した開業届の控えを持ってきたので受付印を押してください」とお願いしても絶対に押してもらえません。
開業届に限らず、税務署に提出した書類の控えに受付印が必要な場合には、必ず提出時に控えも同時に提示するよう注意しましょう。
5分で開業届関係書類を作成する方法
ここまで開業届の手順や注意点を書いてきましたが、開業したばかりの人にとっては少しハードルが高いと感じる部分も多いかと思います。
よく分からないので税務署の窓口に行って手続きをするというのも1つの方法ですが、開業当初の忙しい時期では時間的に難しいものです。
そういう方は無料で開業届が作成できる「開業freee」を利用してみてください。
クラウド会計ソフトでお馴染みのfreeeが提供している無料サービスで、メールアドレスなどを入力して利用者登録すれ使用できます。
住所や氏名、屋号や専従者情報などの情報を「質問に答えていく」形で入力していくと、提出が必要な開業届関係書類が自動作成されます。
ありがたいことに、控え用も自動作成してくれます。
入力操作が「質問に答えるだけ」というシンプルな作りなので、初めての方でも5分程度で作業は完了します。
作成された各種届出書を印刷すれば、後は印鑑を押して税務署に提出するだけです。
簡単なので、興味のある方は試してみてください。
まとめ
開業届や青色申告承認申請には提出期限があります。
期限を過ぎると、開業初年度は青色申告ができなくなり余計な税金を支払うことになるかもしれません。
開業届関係の手続きは早めにしておくことをおすすめします。
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