法人税法の基本は22条なので、22条について書いてみた(益金編)
【目次】
今度、税理士会主催で税理士事務所の事務員さん向けに法人税と消費税のセミナーがあります
そのセミナーで講師をさせていただくことになりました
自由に話してもいいのなら楽なんですが、複数会場で別々の講師がセミナーをおこなうパターンなので、内容的に統一しなければいけないとのこと
そこで、講師が集まって打ち合わせなどをしたところ「やはり法人税法の基本は22条だよね」という意見で一致したので、法人税法22条について自分なりにまとめておこうと思ったわけです
とはいうものの、相当な長文になるので記事を分けて書きます
現行の法人税法は昭和40年に全文改正されたものですが、実質的には昭和40年に制定されたといってもいいくらいの全面的改正でした
多くの条文の中で「22条が基本だ」と言われている理由は、法人税の課税標準である「所得金額」の計算方法を規定しているからなのです
では、最初に条文をみてみましょう
【法人税法22条の条文】
(各事業年度の所得の金額の計算)
第二十二条
1 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項 (中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。
22条1項について
まず、1項では
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする
と規定されています
「内国法人の」と書かれているのは、外国法人は含みませんよ、という意味です
「各事業年度の所得」は「益金の額」から「損金の額」を控除した金額とするという規定になっています
通常の会計では、収入とか費用という言葉を使いますが、法人税法では益金、損金という言葉を使います
これは、会計基準で計算した収入や費用とは計算方法が異なるものであるということを意味しているのです
つまり、会計基準に則って帳簿や決算書を作成していても、そのまま法人税の計算はできないということなのですね
22条2項
つぎに、2項では益金の額について規定しています
条文を分解すると分かりやすいので、分解します
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上
当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、
①別段の定めがあるものを除き、
②資産の販売、
③有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、
④無償による資産の譲受け
⑤その他の取引で資本等取引以外のもの
に係る当該事業年度の収益の額とする
① 別段の定めがあるものを除く
法律にありがちな「特別な取り扱い」や「例外規定」になっているものを除いた、一般的なもの全てについての規定ですよ、ということを最初に言っているわけです
② 資産の販売
通常の商売において販売する商品だけでなく、ありとあらゆる資産の販売が益金になりますよ、という意味です
③については、内容をさらに分解しなければいけません
③-1 有償又は無償による資産の譲渡
これは、販売行為以外でも、法人所有の土地や建物、車両などの資産を譲渡した場合には、益金に含めますという意味です
問題は、「無償」による譲渡の部分ではないでしょうか
無償ということは、タダということです
つまり、タダで会社の資産を他人に譲り渡しても益金の額に算入しますよという規定なのです
さて?益金の額はいくらなの?ということになりますよね
タダで譲ったのだから、益金はゼロと考えてしまいがちですが、実はそうではありません
答えを先に書くと、この場合の益金の額は「時価」になります
つまり、時価100万円の資産を無償で誰かにあげちゃったとしても、法人税法上は収入(益金)100万円を計上しなければいけないということになるのです
この規定は、そもそも法人は営利目的で設立されているものなので利益を損なう取引は認められない!という考え方からきています
そもそも会社の資産をタダで譲渡するなんてあり得ないでしょ!
法人利益を不当に圧縮しようとでもしているのではないですか?
認められませんね!益金加算してください!
ということです
対価を得ないで資産を譲渡した場合でも、本来得るべきだった時価相当額の収益は法人収益(益金)として計算しなければならないのです
でも、実際にお金を貰っていないので、会計処理はどうすればいいの?ということになってしまいます
この場合の会計処理(仕訳)は
【借方】/【貸方】
寄付金/収入(時価)
となります
別の条文で、法人税法上は寄付金が損金(費用)にならないという規定がされているため、実質的に時価相当額は所得金額として課税対象になってしまうわけですね
③-2 役務の提供
商品や資産などの物品移動が無い場合でも、役務(サービス)を提供した場合には、益金として計上しなければならない、という意味です
この役務提供についても、資産の譲渡と同様に、有償・無償を問わず益金の額になります
④無償による資産の譲受け
次が、無償による資産の譲受けです
つまり、ただで資産を貰った場合のことを規定しています
通常、資産を手に入れようとすれば、対価(代金)を支払う必要がありますが、何らかの理由でタダで資産を貰った場合には、その資産の「時価相当額」を益金の額として計上しましょうということなのです
こちらの考え方は単純で、タダで物を貰ったんだから得してるでしょ!ということなんですね
法人税法が一般的に理解されにくい法律なのは、ここらあたりの感覚が浮世離れしているからなのかもしれませんね
普通、お金が動かなければ収益や費用を認識することはないのですが、法人税法ではお金が動かなくても益金として認識してしまうので、うっかりすると大変なのです
⑤ 資本等取引以外のもの
最後の部分ですが、「資本等取引以外のもの」という規定です
例えば、資本金の払込があった場合などは法人にお金が入ってくることになるわけですが、これは「資本等取引」になるので、益金の額には算入されません
つまり、貸借対照表上の「純資産の部」にかかる取引については、収益(益金)には含めないということです
まあ、当たり前といえば当たり前のことなんですが、法律なので書いておかなくてはいけないわけですね
益金の額についてだけ書いたわけですが、こんなボリュームになります
「損金の額」については、次回につづくということで…未だ書いてませんが(笑)
【コラム投稿に関する注意点】
コラム(税理士の日記)に投稿された内容は、執筆当時の法令や情報等に基づいており、前提条件を限定した内容となっています。
安易にそのまま適用されることのないよう、お願いいたします。
実際の税務や会計の処理にあたっては、最新の法令やご自身の条件を検討のうえ、不明な点は専門家等へ個別にご相談してください。