法律を扱う仕事をする以上は、やはり条文を読まなければいけないという話

先日、税理士事務所の職員向けセミナーの講師をしました。

税理士事務所にお勤めの職員さんのうち初中級者向けのセミナーだったのですが、その中で私が一番伝えたかったことが、この記事のタイトルにもなっている「条文を読め!」ということです。

セミナーの中でも、何回も繰り返した言葉です。「必ず根拠となる条文を読みましょう。」と

税理士にしても、その事務所で働く職員にしても、さらに言えば税務職員にしても、どちらかと言えば「法律家」ではなく法律を扱う仕事をする「実務家」という色が濃いのが現実だと思います。

多くの実務家は、どしても事例が多く出ている参考書を読んでしまって、ともすれば元の条文を読んだことが無いなんて項目もあったりするものです。

実際のところ、実務的には条文を読まなくてもあまり困らないので、こういった状況が生まれてきているわけでありますが、やはり条文を読まなければ「そもそもの考え方」が理解できないと私は思っています。

例えば、法人税法で内国法人の納税地について定めている条文があります。

法人税法第十六条
「内国法人の法人税の納税地は、その本店又は主たる事務所の所在地とする。」

この条文だけを棒読みすれば、内国法人(日本の国内に本店を置く法人)の法人税の納税地は「本店又は主たる事務所の所在地」だということが分かります。

分解してみると、

内国法人の納税地は

①本店の所在地
又は
②主たる事務所の所在地

の何れかということになるわけです。

では、
とある法人が法人登記上の「本店所在地」を社長の自宅としている場合を考えてみましょう。

その会社の営業上の事務所は社長の自宅とは違う場所にあり、そこが実質的にはその法人の主たる事務所となっている場合に、法人税の納税地はどう考えるべきなのでしょうか?

法人税法第16条を棒読みすれば「本店所在地」又は「主たる事務所の所在地」を納税地とするのだから実質的な主たる事務所の所在地(登記上の本店所在地ではない場所)を納税地にできるのではないか?と考えてしまいます。

答えは×です。

法人税法上の原則(第16条)では、法人税の納税地は、

「法人登記上の本店所在地」
又は
「法人登記上の主たる事務所の所在地」

なのであって、実質的な事務所の所在地は納税地にはなりません。

これは登記簿上の問題が絡んでいて、株式会社などの一般法人を登記するときは法人の所在地を表す項目として「本店の所在地」という表現がされます。

一方、社団法人や医療法人などの形態では「主たる事務所の所在地」という表現になっているのです。
この部分を補完するために、条文で「本店又は、主たる事務所の所在地」と記載しているわけです。

注意
法人登記上の本店や主たる事務所の所在地が実質的な本店等所在地と異なっている場合、税務署長が「納税地指定」をおこなって、法人登記上の所在地とは異なる場所が納税地となる場合もあります。(法法第18条)

このような基本的な部分って意外と参考書には書いていなかったりします。

参考書に書いてないと「どこに書いてあるんだー!」って慌てるんですよね。でも、条文を読めば分かるということも結構多いのです。

これから税理士を目指す方には、是非「条文を読む」という習慣を付けて欲しいと思います。

そして、できれば条文の主旨(立法趣旨や背景など)も併せて勉強されれば、より理解が深まるのではないでしょうか。

(補足)

この記事内で触れているのは「法人税法上の納税地」についてです。

言い換えると「法人税の申告と納税をする住所(所在地)」のことです。

実質的な営業拠点が登記上の住所と異なっているケースの是非について言及したものではありませんので、誤解のないようにお願いします。

本記事の趣旨は、条文の読み方についてお伝えすることを主目的にしており、「法人税法上の納税地」については一例として取り上げたものに過ぎません。

あくまでも原則的な取扱いを示していますので、個々の事例にそのまま当てはめることが出来ない場合があります。

 

【コラム投稿に関する注意点】

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