消費税の仕入税額控除の注意点~免税事業者が課税事業者になった年
世間では「SOHO]や「スモールビジネス」と呼ばれる、比較的小規模なビジネスが流行しています
売上規模で見ると、1千万円前後の事業者が多いようですね
そんな、売上1千万円前後の事業者にとって、注意しておかなくてはいけないのが
「消費税の申告義務」です
基準期間の売上高によって、課税事業者になったり、免税事業者になったりします
今回は、そんな事業者の方にむけて、消費税申告の注意点を書き留めておきます
前々年の課税期間(基準期間)の課税売上が1千万円を超えるなどして
今年から消費税の課税事業者になったという事業者の方の注意点です
原則として、消費税の課税仕入は、商品などを仕入れた時(年)の課税仕入となります
しかし、前年が免税事業者だった場合には、前年から繰り越してきた「棚卸資産」について
課税仕入として消費税を計算することになります
この取り扱いは、国税庁のタックスアンサーにも掲載されています
(国税庁タックスアンサーより)
免税事業者が新たに課税事業者となる場合に、課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた棚卸資産がある場合は、その棚卸資産に係る消費税額を課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とします。
この対象となる棚卸資産は、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品等で、現に所有しているものをいいます。
また、仕入税額控除の対象とすることができる棚卸資産の消費税額の計算は、その棚卸資産の取得費用の額に108分の6.3(消費税率8%の場合)を掛けた金額となります。
この場合の棚卸資産の取得費用の額には、その棚卸資産の購入金額のほかに、引取運賃や荷造費用、そのほかこれを購入するために要した費用の額などが含まれます。
また、この適用を受けるためには、その対象となる棚卸資産の明細を記載した書類をその作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日から、7年間保存しなければなりません。
ところで、これとは逆に課税事業者が免税事業者となった場合には、課税事業者であった課税期間の末日において所有する棚卸資産のうちその課税期間中に仕入れた棚卸資産に係る消費税額は、その課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額には含まれないこととされています。
いかがですか?
わかりづらいでしょう?(笑)
ということで、わかり易く説明します
------
まず、これから説明する内容を知っておいて欲しい方は
今年から新たに課税事業者になった事業者の方
(つまり、前年が免税事業者)
で、
簡易課税で消費税の申告をしない事業者の方
で、さらに
前年以前の免税事業者だった年に仕入れた商品の在庫をかかえている
場合の話です
ここまでの要件に全て該当した場合のみ、読み進めてください
------
例をあげて説明しましょう
平成26年(免税事業者だった年)に仕入れた商品のうち
50万円が在庫として残っていました
この50万円の在庫は、平成26年分の決算において
「期末棚卸高」に計上され、翌年の平成27年分に繰り越されました
平成27年は課税事業者です
平成27年分の消費税申告において
課税売上は、平成27年中の課税売上が対象となります
一方、課税仕入は
平成27年中の仕入高や課税取引となる経費の支出が該当します
さらに
前年から繰り越した50万円の棚卸商品も課税仕入として計算に入れます
ということ
なぜ、わざわざ棚卸資産のことが個別に取り上げられているのかといえば
前期から繰り越してきた棚卸商品が会計処理上は売上原価に振り替えられるだけで、課税仕入が発生するという仕訳が出てこないからなんですね
そこで、実際には消費税の申告計算のときに
免税期間であった前年から繰り越してきた棚卸商品分を別途課税仕入として計算に入れて
消費税の確定申告をしましょうね、ということになったわけです
国税庁の説明で「108分の6.3」となっている部分は、仕入れたときに掛かった消費税が8%だったときの計算方法ですので、税率が異なる場合には計算方法が違ってきます
仕入れたときの消費税率が5%だった場合は、105分4
今後10%に引き上げられ、10%の消費税が掛かっていた場合には、110分の7.8
となります
------
ちなみに、このケースとは逆に
今年が課税事業者で、来年が免税事業者になる場合
今年(課税事業者)の仕入高のうち、来年(免税事業者)に繰り越す商品がある場合
今年の期末棚卸高は、今年の消費税の申告上は課税仕入には入りませんので、注意しましょう
繰り返しになりますが
簡易課税で消費税の申告をする方には、関係のない話ですので、ご安心くださいね
【コラム投稿に関する注意点】
コラム(税理士の日記)に投稿された内容は、執筆当時の法令や情報等に基づいており、前提条件を限定した内容となっています。
安易にそのまま適用されることのないよう、お願いいたします。
実際の税務や会計の処理にあたっては、最新の法令やご自身の条件を検討のうえ、不明な点は専門家等へ個別にご相談してください。