税理士報酬を安くする方法とか気にしてたら、時給千円レベルのサービスしか受けられないかもしれませんよ
「税理士報酬を安く!」という謳い文句の税理士紹介サイトは多いですね
確かに、税理士報酬も企業コストなので安いに越したことはないわけです
しかし、ただ単に安価なだけでというのは内容が伴わないケースも多いので注意が必要です
そもそも税理士報酬額がどうやって決まっているのかを知っていただいて、そのうえで「格安」ではなく「割安」の料金で良いサービスを受ける方法などをお伝えしたいと思います
税理士報酬はどうやって決まる?
もともと税理士報酬には「報酬規程」というのが存在していました
多くの税理士は、この規定に準じて報酬を決めていたのですが、今はこの規定は無くなっています
規定が無くなったことで多くの税理士事務所は自由に報酬を決めることができるようになりました
最近では顧客獲得のために安い報酬を謳っている事務所も増えてきましたね
こういった安い事務所は報酬を安く設定する代わりに、多くの顧客を抱えて「薄利多売」で利益を出そうという狙いです
したがって、1社ごとに寄り添った手厚いサービスは期待できません
そもそも、税理士報酬の金額を決めるときに税理士が元にする数値は「時間単価」です
つまり「自分が1時間仕事をしたら、いくらの報酬をいただく価値があるか」という金額をもとに報酬を決めます
この時間単価は人によってバラバラです
人によっては5千円という場合もあれば、5万円という強者もいます(笑)
とある先輩税理士の方は時間単価1万円でやっているとのこと
ただし、ほかの税理士の数倍のスピードで処理できるから割安なのだと言ってました
例えば、会社との顧問契約を月3万円で契約したとしましょう
時間単価5千円の税理士は、1か月に6時間くらい作業が必要だと見込んでいます
一方、時間単価1万円の税理は、1か月に3時間くらいで処理できると見ているわけです
はたして、どちらの税理士に依頼するべきなのでしょうか?
私は後者に依頼するべきだと思います
時間単価というのは、「自分が生み出す価値」あるいは「顧客に与える価値」を数値化したものです
つまり、後者の税理士のほうが高い価値を生み出せると(本人は)考えているわけです
でも、自意識過剰なだけじゃないの?という疑念もありますよね(笑)
確かにそういった人もいないわけではありませんが、時間単価1万円です!と言い切れる人は、逆にそれだけの価値を顧客に与えるんだというサービス精神の持ち主でもあるのです
実際には、そこまで言い切れる税理士は少ないのですが・・・
ちなみに私も時間単価をどんどん引き上げていきたいと考えています
とはいっても、顧問契約料を増額しようとしているのではなくて作業時間を減らそうとしているわけです
いままで3時間かかっていた作業を1時間でできるようになれば、時間単価は1.5倍に上がったことになるわけですね
そうなると、さらに顧問先を増やすこともできるので総収入は増えるという計算です
さらに、自分自身の能力が上がれば同じ時間でより上質なサービスを提供できることにもなります
気になる激安顧問料のカラクリ
時間単価の説明から分かるとおり、税理士報酬ってそんなに安くはならないものなのです
安くても時間単価は5千円くらいが限界ではないでしょうか
ところが、激安を謳う事務所が都市部を中心に増加しています
記帳代行と決算と申告もコミコミで月1万5千円とか・・・
普通に考えたら、時間単価2千円くらいの計算になります
薄利多売といっても、固定費なども必要なので厳しいはずなのですが・・・
実はこういった激安事務所の多くはアルバイトを活用して入力作業を行っています
時給1,000円くらいのアルバイトにひたすら入力してもらえば、時間単価2,000円でも1,000円の利益がでるという計算なのです
しかし、税理士である以上はチェックや分析は必要なのです
はたして1時間1,000円でどこまでチェックや分析ができるのでしょうか?
おそらく、チェックは形式的なチェックだけ、分析も会計ソフトから出力された資料を顧問先に提示するだけという状態になるはずです
(もしくは、サービスをレベルアップしようとすると「別途料金」が発生する仕組みなのかもしれません)
この状態って、税理士の仕事とは言えないのです
やり方さえ覚えてしまえば誰にでもできる作業ですよね
現に、時給1,000円のアルバイトが、そのほとんどの作業をやっているのですから
本来は、税理士として責任を果たすための作業や顧客のためのサービスや助言など、税理士本人がやるべきことは沢山あるのです
その部分の時間を計算すれば、激安顧問料では十分な仕事はできないはずなのです
もっとも、経営分析や税務に明るい社長であれば、こういった激安事務所に依頼されても問題ないのですが
もし、そこまで明るいのであれば、そもそも税理士に依頼する必要は無いようにも思います
税理士が提供するサービスとは
最近では、報酬を安くにする代わりに「会社に訪問しない」という事務所が増えてきました
メールや郵送で会社から会計処理に必要な資料を送ってもらい、入力などの処理をするという形です
ただ、このケースって相談対応の部分が手薄になるというか、はっきり言って「できない」のではないかとも思います
私の周りにいる先輩税理士の多くは「最低でも3か月に1回は会社訪問すべきだ」と言います
会社訪問の重要性は、税や会計の専門家である我々が会社に行って実際に自分の目で状況を見ることにあります
「質問があったら連絡してくださいね~」だけでは、相談対応していることにはならないのです
私たちから積極的に質問やアドバイスをして、経営者の悩みを聞き出すことが本当のサービスなのだと思います
私の事務所は顧問先に対して「サポート型」の関わりを持つという考え方なので、訪問無しで報酬を安くするという考え方はしていません
記帳代行についても、将来的には会社で経理ができるようになるという考えのもとに行っていますので、顧問先に応じて処理が可能になった部分から、会社に処理してもらうよう移行させていきます
そして、ある程度の経理処理が会社で可能になったら「記帳代行料」分はカットするという形になります
以前、「税理士がまともに仕事をすると顧客がいなくなる」という趣旨の記事を書いたのですが、まさに自分の仕事は自分の顧客を減らすような作業なのかもしれません
でも、そうしていかないと経営管理という経営者にとって重要な作業を、いつまでも他人任せにすることになってしまうのです
経営管理ができる経営者のための税務・会計事務所として、サポートし続ける税理士でありたいと思います
それが、自分の価値を高めることにもつながると考えています
【コラム投稿に関する注意点】
コラム(税理士の日記)に投稿された内容は、執筆当時の法令や情報等に基づいており、前提条件を限定した内容となっています。
安易にそのまま適用されることのないよう、お願いいたします。
実際の税務や会計の処理にあたっては、最新の法令やご自身の条件を検討のうえ、不明な点は専門家等へ個別にご相談してください。